

―― 松井先生はペリオがご専門ですが、拡大鏡を使う意味をどうお考えですか?
松井先生 患者さんにより質の高い治療を行ないたいという思いは、歯科医師なら誰しも持っているでしょう。そのためには、患者さんをよりよく見る、そして見ることで状態をよりよく知る、ということが重要になります。その見える、知る手段があれば、我々はその努力をしなくてはと思います。その1つとしてサージテルは利便性が良く、私にとっては欠かすことのできないアイテムですね。
例えば、歯肉縁下の歯石やプラークを除去するときは特に必要になりますし、大臼歯部の分岐部に何かの操作をするときにも、裸眼と比べてラクに見ることができます。歯間乳頭の縫合の場合でも、拡大すると幅が広く見えるので、正確に縫合することができますね。日常の臨床の精度を高めるために、というのがサージテルの使い方だと思います。
補綴やエンド、ペリオやインプラントなど何をやるかで倍率は変わってくると思いますが、ペリオの場合は、2.5〜3倍くらいが一番使いやすいと思います。
―― 衛生士の進藤さんはサージテルを使い始めて半年ですが、どんな感触を持っていますか?
進藤さん
まさに、患者さんと接する上での視野が広がった感じです。衛生士の立場からも、現状がどのような状態かを正確に知ることから診療が始まると思います。その状態によってアプローチの仕方が変わることもありますね。例えば、今までは「このくらいの歯肉の腫脹なら許容範囲かな」だったのが、拡大すると「この腫脹だったら、こういうTBIをしよう」というふうに変わりました。常にプラークコントロールができていると思っていた患者さんでも、よく見ると「この部分はまだ足りてないな」と気づけるので、それをお伝えできます。
また、私自身、ひとつ驚いたことがあったんです。患者さんに「進藤さんも先生と同じ眼鏡で見てくれているんだね、すごく安心」と言っていただいたんです。患者さんからの反応があるとは思っていなかったので、これはうれしかったですね。
―― ペリオの治療において、衛生士さんはどんな役割を果たしているのでしょうか?
松井先生 衛生士さんがいなければ、間違いなく歯周治療はできないです。ペリオに限らず、歯科治療はドクター、衛生士、技工士の協同作業ですから。この診療所では、ほとんどの場合、初診で衛生士さんが患者さんの話を聞き、その後初期治療をした上で必要に応じてさらに積極的な治療を行なうシステムになっています。進藤さんをはじめスタッフのおかげで、とてもスムーズに進めることができています。
これは、進藤さんが、患者さんが何を望んでいるか、ドクターがどういう考えなのか、望みを実現するには何が必要なのか、そのために衛生士として何をするのかを、すべて理解しているからできるんです。その進藤さんがサージテルを使って、裸眼では見えにくかったところまで見て初期治療をしてくれているわけですから、その治療結果も変わってくると思いますね。
進藤さん 私は初診で来られる患者さんを担当する機会が多いのですが、最初が肝心だなってすごく思います。初診で患者さんの気持ちをできる限り把握し、その後も来てもらえるようにすることが大切ですから。初期治療の中でスケーリングは通常4回に分けて行なっています。歯肉の炎症が強い方にはブラッシング指導を何回か行ない、ある程度コンディションが良くなってからスケーリング・ルートプレーニングを行ないます。そうすると初期治療の間5〜6回は患者さんと接することができるので、その間に、いかにコンディションとモティベーションを上げ、治療に入れる体制を整えることができるかを考えています。その後の治療をスムーズに進めるためにも、モティベーションの向上は重要だと思います。また、歯周治療は長期間に及ぶことが多いです。その中で一度上がった患者さんのモティベーションを持続していただくことも、私たち衛生士の役割が大きいと思っています。
―― モティベーションの向上について、もう少し詳しくお願いします。
進藤さん 患者さんのモティベーションの高さはそれぞれです。また、そのモティベーションがどのタイミングで上がるか、下がるかもそれぞれだと思います。その変化をしっかりと把握し、今この方には何が必要なのか、何を望まれているのかを感じ取ること、そのためには患者さんとのコミュニケーションと観察力が必要だと思います。衛生士としての目線だけでなく、1人の人として患者さんと向き合い、患者さんが口には出しにくい気持ちなどを感じ取れるようにしていきたいと常に思っています。今後も衛生士と患者さんという関係と、人と人としての関係、両面を大事にしていきたいです。
―― では、初期治療についてはいかがでしょうか。
松井先生 歯周治療全体の中での初期治療はとても重要だと考えています。ペリオの程度が軽度なら、初期治療だけで治療を終了できます。しかし進行している場合は、初期治療を通じて歯周外科処置の必要性を判断していきます。明らかに歯周外科処置が必要と診断しても、初期治療なしに歯周外科処置を行なうことはほとんどないです。炎症が強いと麻酔の効きが悪い、出血も多いなど、歯周外科処置が難しくなりますから。また、先ほど進藤さんが話していたように、患者さんとのコミュニケーションが図れていないと良い結果に結びつかないと思います。初期治療なくして歯周治療はうまくいかないですね。
―― 最後に、進藤さんと松井先生の今後の目標を教えてください。
進藤さん 技術面で向上していくのはもちろんですが、患者さんにできるだけ安心してもらえるような、メンタルの部分にもう少し取り組んでいきたいです。歯周病の治療というとあまり良いイメージはないと思うのですが、「頑張って治療を受けて良かった!ここに来て良かった!」と思ってもらえるようにサポートできたらと思います。ほとんどの方は歯科治療を受けたことがあると思います。チェアーに座るときのドキドキ感はみんな経験されていると思うんです。少しでもその緊張を和らげたいという気持ちから、最近はアロマセラピーの分野も勉強して取り入れました。できるだけリラックスして治療を受けていただけるよう、そして患者さんの期待に応えられるよう、技術、知識も高めていきたいですね。
松井先生 この診療所全体で、エンド、補綴、矯正、衛生士などのプロフェッショナルが集まった、きちっとしたチームを作りたいですね。そしてチーム全員がお互いに意見を出し合い、少しでも患者さんに良い治療を受けていただけるよう最大限努力する。そのためにも知識、技術を研鑽し、日々精進していかなくてはと思います。ありきたりですが、プロフェッショナルが揃ったチーム体制で、来てもらった患者さんに「ここで治療を受けて良かった」と思ってもらえる医療を提供し続けていきたい。そう考えています。