南先生は"職人のDNA"を受け継がれていると聞きました。
どういうことでしょうか?
僕の実家って工場なんですね。生まれたときから機械や工具が身近にあって、それを見るのがすごい好きでした。だから、歯医者へ行っても自然と器具に目がいくわけです。自分の番じゃないときは、ほかの患者さんの歯を削っている様子をじーっと見て楽しんでいました。
歯科医師になってからも工具好きは変わらず、自分が使う道具にこだわり出したら止まりません。道具って最初に何を使うかが肝心なんです。なぜなら、自分のベースをつくるから。たとえばズルズル下がってくるような拡大鏡だったら、「重っ、ダルっ、イヤっ」ってなっちゃいます。目も疲れるし。そんな経験をしたら使わなくなりますよね。そうなると、それが自分のベースになってしまうんです。
小学生から職人の父のもとで手伝いをしていたので、技術力がいかに重要かということは子どもながらに感じていました。繰り返し練習をし、研鑽を積んで積んで積み上げる。それが絶対に必要です。いち早く1年間の研修会に参加したのも、そのため。知らないことが多くて愕然としましたが、だからこそ得るものも大きかったですね。けっして秘蔵のテクニックとかではありません。どちらかというとベーシックなこと。でも、そのベーシックなことを確実にできるかできないかで歯科医師人生は大きく変わってくると思うんです。