治療だけの関わりでは何も生み出さない
日本の歯科医院のあり方として、「痛くなったら行く」というのがまだまだ主流ですよね。その場限りの出会いというか、瞬間的なお付き合いというか。治療をして痛みが取れたら来なくなり、痛くなったらまた来る。でもそれって、何も生み出さないんじゃないかと僕は思うんです。治療をすれば痛みは取れるかもしれませんが、そもそもむし歯や歯周病を招く根本的な原因の解決にはなっていないわけですから。
自分で開業するときはそうならないように、患者さんと長く付き合えて、健康を一緒に守れて、笑顔でい続けてもらえる医院をつくりたいとずっと考えてきました。そのビジョンを実現するためのキーワードが「時間」です。これまでいくつかの医院で働いてきましたが、時間の取り方ひとつで患者さんのその後の意識がまったく変わるのを目の当たりにしてきました。
たとえば保険診療中心の医院では、どうしても時間に制限が。患者さんの話を深く聞くことも、こちらから歯の大切さや予防の重要性を伝えることもできませんでした。一方で時間に制約を設けない医院では、じっくり接するうちに患者さんの視点がシフトする瞬間があるんです。最初はむし歯1本の治療で来たのに、「ここも診てほしい」「昔入れた銀歯は大丈夫?」って。そうした経験を通して、時間を惜しまないことが僕の中で絶対条件になりましたね。