小野里 優先生

地域の人にとって、
〝最後に頼れる歯科医院〞
でありたい!

小野里 優先生

Oz Dental Clinic 前橋(群馬県)

EVK800(10倍) Micro Odyssey

「治療を終えると、まるで人生が変わったかのように喜んでくれる方がいます。でも本当に大事なのは、その先もずっと健康に過ごしてもらうことなんです」

そう話すのは、Oz Dental Clinic 前橋の院長・小野里 優先生。
約1年前に、ご自身の地元である群馬県前橋市に開業しました。
治療を終えた患者さんにずっと快適な毎日を送ってもらうため、 小野里先生が行なったのはサージテルのチーム導入です。
スタッフ全員が拡大鏡を使うべきだと考えるようになるまでの、 経緯や気持ちの変化についてお話をうかがいました。

ずっと憧れてきた職業しかし現実は……

小野里先生

僕の中で歯科医師は、ずっと憧れの職業でした。自分の技術で勝負している、診療も手術もなんでもできるという感じがして、すごくかっこいいイメージがあったんですよね。親の勧めもあって医療系に進むことは決めていたので、中学を卒業する頃にはすでに歯科医師になることを決意。歯学部に入るときは、キラキラした夢の世界へ飛び込む思いでした。

ところがいざ臨床に出てみると、思い描いていたのとちょっと違っていて……。技術で勝負するどころか、思うように処置できないことのほうが多かったんです。たとえばむし歯の治療ひとつにしても、学校では「カリエスになっている部分だけを削る」と習いますが、実際にはむし歯を取り残してしまったり、健康な歯を触ってしまったりと技術面が追いつかないことばかり。歯周治療で、取ったつもりの歯石が取り切れていなかったということもありました。教科書や論文に書かれた内容を完全に再現するのは簡単じゃない、という現実に直面したんです。

この、理想と現実がかけ離れている感覚は、おそらくどの歯科医師も一度は感じたことがあると思います。だからこそみんな勉強し続けて、技術を極め続けて、経験でカバーしながら研鑽していくんですよね。歯科医療は臨床に出てからが本番。長い歯科医師人生をかけて理想の結果へ近づけていくことが、永遠の課題なのだと思い知らされました。

理想とする歯科医師へ!希望の光が見えた恩師との出会い

そんな壁にぶつかっていた僕に希望を与えてくれたのは、秩父臨床デンタルクリニックの院長・栗原仁先生でした。大学生の頃からアルバイトをさせてもらい、研修医時代もずっとお世話になってきた先生です。

栗原先生は、僕が追い求めてきたかっこいい歯科医師そのもの!一般的な治療はもちろん、歯槽骨の再生やインプラントオペなどなんでもできるうえに、治療の完成度もすべて高いんですよ。まさに、教科書通りの結果を常に出しているという感じ。すべての診療に誠心誠意向き合っていて、「時間がないから妥協的なところで落ち着いてしまう」ということがありません。技術と志で勝負している歯科医師という印象でしたね。

なかでも衝撃を受けたのは、拡大鏡サージテルを使っていたことです。しかも栗原先生だけでなく、秩父臨床デンタルクリニックでは勤務医から歯科衛生士まで、患者さんの口腔内を診るスタッフ全員が拡大視野で診療していました。思わず「どうしてみんなでサージテルを使うんですか?」と聞いてみたのですが、「歯はこんなに小さいのに、逆にどうやったら裸眼で診療できるの?」と返答が。見えるからきちんと結果を出せる。普通に考えれば当たり前のことに、当時の僕は気づいてすらいなかったんです。

理想の治療ができるようになるまでには、とにかく時間をかけなければ……。そう思い込んでモヤモヤしていたものが、一気に晴れた気分でした。

拡大することでこだわるレベルが上がる

小野里先生

一流の歯科医師を目指すなら拡大鏡は必須。その思いがあったので、大学5年生になった頃には自分でサージテルを購入しました。最初は7倍からのスタートです。

サージテルを使い始めて一番感じているのは、「こだわるレベルがワンランク上がった」ということですね。裸眼のときは処置をする際、感覚に頼ることがどうしても多かったのですが、見えるとそこが楽にクリアできます。その分、もう一歩先の段階に時間をかけたりこだわりが持てるようになるんです。

たとえば形成のフィニッシュラインをより整えようとか、削ったところをもう少し念入りに修正しようとか。1ミリにも満たない世界での作業に没頭でき、教科書に書かれている以上のことを自分なりに追求できる感覚がありますね。

それに、一般的な歯科治療ってどんなに完璧な処置をしたとしても、「本当にちゃんとできたかどうか」というのがわかるのは時間が経ってからじゃないですか。治療後しばらくしてから患者さんに「何か変なんです」と言われて初めて「あぁ、あのときのアレがダメだったのかもしれない」とわかるというか。その点拡大視野で治療をすると、削った瞬間、メスで切った瞬間に「できた」「できていない」が目で見てわかります。結果を待たずして予後の経過がある程度予測できるので、絶対に手放せない道具ですね。

治療後の健康を守るためメインテナンスも拡大視野で

Oz Dental Clinic 前橋を開業するにあたり、僕の拡大鏡は10倍に倍率アップ、歯科衛生士には一人一台6倍のサージテルを導入しました。理由は、「治療を終えたら予防のステージに移行して、当院を〝最後の治療の医院〞にしてほしい」という理念を掲げたかったからです。

特にリスクの高い患者さんの場合、治療がうまくいったとしてもそれで「さようなら」となってしまえば、どうしたって口腔内の健康は維持できません。その先をメインテナンスでいかに守れるかが重要で、歯科医師と歯科衛生士、それぞれの立場から責任を持って診ていく必要があると思うんです。

となると、仮に10倍の拡大下で治した口腔内を裸眼でメインテナンスしたら、歯科医師としてはやはり不安が残りますよね。そこで歯科衛生士も拡大鏡を使ってくれると、〝予防メインテナンスの主治医〞として安心して任せられます。

自分が治療で手が離せないときに「◯番に違和感があります」といった正確な情報を歯科衛生士から伝えてくれることもあるので、そういった場面でも助かっていますよ。患者さんをお待たせしないというのも含め、全体的に時間のロスが減り、効率のよい診療ができるようになったと思っています。

地元に根づく歯科医院として、患者さんの歴史を追い続けたい

小野里先生

正直いうと、大きな手術や派手な治療が成功したときって、歯科医師としては楽しくて幸せな瞬間なんです。でも本当に大事なのは僕の満足感じゃなくて、そこから先何年、何十年と経過していく中で、患者さん自身がなんの問題もなく快適に生活できること。そのためには理想的な治療を追い求めるだけでは不十分なんですよね。開業をきっかけに、その大切な部分を見直せたのはよい機会だったと思っています。

日本はヨーロッパやアメリカに比べると、治療を必要としている人がまだまだ多い国です。つまり、現段階では僕が歯科医師としてやるべきことがたくさん残されています。これから治療と予防メインテナンスをきちんと両立することができれば、いずれ治療の仕事は減っていくでしょう。それは決して残念なことではありません。予防のステージへ早く進めるお手伝いをさせていただけるほうが、歯科医療従事者としてむしろやりがいを感じられるのではないでしょうか。

患者さんに長く通ってもらえると、病歴、性格、生活の変化といった、その方の人生の歴史を追い続けることができます。将来的にはそこまで踏み込める医院になることが目標です。「ちょっと話を聞きたい」「検査だけしてほしい」など、セカンドオピニオンとして利用してもらうのもありかもしれない。どちらにせよ、僕が育ったこの地域にとって〝最後に頼れる医院〞でありたいですね。