自分の技術を伝承するのは簡単なことじゃない
僕は個人的に、給料というのは“後からついてくるもの”だと思っています。もちろん、労働への対価を得るのは重要ですよ。でもそれ以上に、先輩からいろいろ教えてもらったり、治療や技術について学んだり、自分の成長を感じられることが大事なんじゃないかなと。スタッフ教育に力を入れているのも、そうした考えがベースにあるからです。
とはいえ、なかなか思うように進められないことも……。たとえば、僕が歯周外科のオペをする様子をドクターたちに見学してもらうとき。見て技術を学んでほしいのに、今ひとつ伝わっていないんです。僕としてはポイントを押さえて説明しているつもりだし、ドクターたちもスマホで録画するなど勉強しているはずなんですけどね。
その後、彼らが同じオペをしている現場を見にいくと何かが違って。「僕が見ているのはそこじゃないんだよな」とか「フラップの開け方がもう1ミリ足りないんだよな」とか、細かいギャップを感じることが少なくありませんでした。
ただ、それも仕方ないですよね。僕の後ろから覗き込むのでは絶対に死角が出てきます。完全に張りついて見るというのは難しいですし、スマホで撮った動画のクローズアップにも限界がありますし。自分の持っているものを人に見せたり伝えたりするのは簡単じゃないんだな、と痛感させられる日々でした。